Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

交代が来ると、蔵六は、へとへとになって、紺屋ッ原へ、帰って行った。黒い溝川と、枯れ草と、霜解けとの中に、もっそう長屋の塀が、反っくり返っていた。百戸ばかりの牢番が住んでいる。

「父ンが帰った。父ンが――」

と、凧をあげていた鼻ったらしが、二、三人、彼に取っついた。がたびしの入口は、下駄の歯を叩いた泥で、惨憺だ。障子には、絵や字が、描いてあるし、奥には、ぴいぴい泣いている。子供だけで、沢山なのに、病人の女房の裾に、赤犬が、後足を嘗めていたので、

「こいつッ」

と、家へ上がるが早いか、蔵六は、手の弁当箱を投げつけた。

「あ痛ッ」

病人のそばで、密々、話し込んでいた女衒の粂吉が、耳を抑えて、飛び上がった。

「やいっ、老ぼれ奴! な、何よう、しやがンでえ」

「あたったか。犬に」

「犬はもう外で、尻ッ尾を振ってら。あやまれ」

「そう怒るなよ」

と、女房の枕元に泣いている娘に気づいて、

「粂吉さん、娘の奉公口は、都合が変ったから、見合せてもらいてえが」

「何だと、見合せてくれ?」

「む。金が、いらなくなった」

「ふッ、ふざけちゃいけねえ。病人と、おめえとで、掌を合せて拝んだなあ、おとといのことだぜ。