Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
火と、焼け土とが、滝となって、ざっと落ちてきた。――屋根の上の外記が、死を決して、雲霧へ、跳びかかろうとした瞬間に、その震動が、二人をぐらっと蹌めかしたのである。
「あッ――」
「あッ!」
と、二人は、一緒だった。顔を抑えて、俯伏したのである。外記は、ふたつの眼が、二つとも焼金に突き貫かれたような痛みを感じて、
「残念ッ。――残念だッ」と、さけんだ。
ばらばらと降る灰に、髪が焦げる、耳が焦げる。
外記は、それを払うのが、やっとだった。眼が開けないのだ。――いくら、開こうとしても、もがいても。
「ちいッ」
と、瞳の激痛をこらえながら、瓦の上を、手探りに、それと思う辺りを、十手で払うと、
「外記ッ。わしじゃ」
と、父の小藤次の声が――
「わしに、早く、わしの背につかまれ、もうこの家の下も火だ」と、いった。
「やッ、父上で」
「あぶないッ」
小藤次は、外記の手を肩に取って立とうとしたが、外記は、振りもいで、
「雲霧はッ、雲霧は?」
「失せた。――たった、一足ちがいで」
「えッ、逃げましたと」
外記は、絶望的に――「父上、何と、この御職責を」
「わしの不明だ。智恵負けだ。腹を切っても、失策の埋合せはつくまい。