Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lisez 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 213 caractères · 325 écrans
「お父上にも、そなたにも、婚儀の前に、こんなご苦労をかけながら、何で、薄情でおられましょうか。ただ、郁次郎がきょうまでの行状を、貴女が疑ってさえ下さらねば……」
「私は、信じておりまする。この信念をうごかしたら、私は、女ではございませぬ」
「そういう心を娶って、自分のものにする郁次郎は恵まれた人間です」
「お見捨てくださいますな。ほんとの、父ひとり、娘ひとりの、私です……」
恐々と、すがる手を、郁次郎は自分の手へ拯い取った。彼女のいじらしい恋は、爪のさきまで、桃いろに燃えていた。熱い、火のような手だった。
「ね、ようございますか、郁次郎さま」
ふるえている。……甘えている。
郁次郎は甘い感激に閉じていた眼を、ふっと、熱い息といっしょにひらいた。そして、何の気もなく、自分の手にある、花世の爪の先に眼を落したのである。
「あ、これを見ては、嫌です」
何か、慌てぎみな羞恥が、花世の頬を走った。ついと、左の手を引ッ込めて、袖の下に隠してしまった。
「はははは」
と、郁次郎は笑った。彼女の他愛なさを、他愛なく笑ったのである。
「ホホホホ」
と、花世も笑った。
油の滲みた燈心が、ぽっと、部屋の中を明るくした。