Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
Lisez 三国志(八) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 195 604 caractères · 391 écrans
三
けれどこれも孔明の命に依ることであることはいうまでもない。遂に彼は、甲まで捨てて谷の内へ逃げこんだ。そして、かねて孔明からいわれていたところの、
(昼は、七星の旗、夜は七盞の燈火の見えるほうへ――)
という指令の目印に従って奔った。
「待て。――ここの地形はいぶかしい」
谷の口まで来ると、司馬懿は急に馬を止めて、逸る旗本どもや二人の子をうしろに制した。
そして、左右の者に、
「誰ぞ二、三騎で、谷のうちを見とどけて来い」と急に命じた。
三
旗本数騎、すぐ谷の口へ馳け入った。大勢が馬首を並べては通れないような隘路である。
「見て参りました」
すぐ戻ってきた面々は、司馬懿にむかって、こう状況を告げた。
「谷のうちを見わたすに諸所に柵あり壕あり、また新しき寨門や糧倉などは見えますが、守備の兵はことごとく南山の一峰へ逃げ退いているようです。はるか其処には、七星の旗も見えますから、おそらくは孔明も、いち早く谷外の本陣を彼方へ移したものと思われます」
聞くと司馬懿は、鞍つぼを打ちたたいて、こう命令した。
「敵の兵糧を焼き尽すは今だ」
蜀軍の致命はただ糧にある。孔明が久しく蓄えたここの穀穴だに焼き尽くせば、蜀軍数十万を殺すに何の刃を要そうや。