Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
Lisez 三国志(八) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 195 604 caractères · 391 écrans
北斗七星旗
一
仲達は眸をこらして遠くを望み見ていた。陰風を巻いて馳け来る一輛の車にはそれを囲む二十八人の黒衣の兵が見える。髪をさばき、剣を佩き、みな跣足であった。北斗七星の旗はその先頭に馳け、また炎の飛ぶが如き赤装束の騎馬武者が全軍を叱咤してくる。
「孔明だ」
仲達はなお見まもっていた。四輪の車は鳴り奔ってくる。車上、白衣簪冠の人影こそ、まぎれなき諸葛亮孔明にちがいなかった。夜目にも遠目にも鮮やかである。
「あはははは」
突然仲達は大笑した。そして旗本以下屈強な兵二千をうしろからさしまねいて、直ちに号令した。
「鬼面人を嚇すというやつだ――妖しむことはない。恐れることもない。破邪の剣を揮って馳け崩してみろ。化けた孔明も跣足になって逃げ出すだろう。汝らが迅速なれば、その襟がみをつかんで、彼奴を捕虜となすこともできる。――それっ、近づいてきた。かかれっ」
二千の鉄騎は励み合って、わあっと、武者声を発しながら驀進した。すると孔明の車は、ぴたりととまり、二十八人の黒衣兵も、七星の旗も、赤装束の騎馬武者もすべてにわかに後ろを見せて、しずしずと引き退いて行く様子である。
「早くも逃げ始めたぞ。