Classiques japonais avec furigana
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さんごくし
三国志(八)
吉川 英治
Lisez 三国志(八) (さんごくし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N1. Touchez un mot pour le sens.
N1 · avancé · kanji et kana modernes · 195 604 caractères · 391 écrans
――ために、営中の軍も出ることができないでおりまする」
孔明は思わず手の羽扇を床へ取り落して云った。
「ああそれこそ、さきに魏廷から軍監として下った辛毘佐治にちがいない。……それほどまで厳に戦うを戒めておるか」
一身を軍国蜀に捧げ、すでに自覚される病もおいて、日々これ足らずと努めている孔明にとって、この事はまた大きな失意を彼に加えた。
時に渭水の流れは満ち、渭水の河床は涸れ、風雨の日、炎熱の日、天象は日々同じでなかったが、戦局はいっこう革まる様子もなく、秋はすでに満地の草の花に見えて、朝夕の風はようやく冷涼を帯びてきた。
「蜀の陣上には、一抹、何やら淋しきものが見える」
仲達はある夕、ひそかに人を放って孔明の陣をうかがわせた。そしてその返答に依っては、突如、奇襲して出でんとしたか、銀甲鉄冑に身をかため、燭光ひそやかに待っていた。
すると、姿を変えて探りに行った将は、ようやく四更の頃、彼の前にもどって来て、額の汗を押し拭いながら復命した。
「蜀陣の旌旗は依然、粛として寸毫の惰気も見えませぬ。また、深夜というのに、孔明は素輿(白木の輿)に乗って陣中を見まわり、常のごとく、黄巾をいただき白羽扇を持ち、その出入を見るや、衆軍みな敬して、進止軍礼、一糸のみだれも見ることができません、……実に、驚きました。