Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
床屋の客にしては、奥にいるというのが変だ。
それと、彼は何よりも、お喜乃という、あの元結売りの娘が眼に残った。お喜乃と、茶縞の侍と、自雷也の入墨とをむすびつけて、考えた。なにかそこにあるような気がしてならなかった。
ちょっと、諦めきれない気がする。お喜乃の住居だけでも知りたい気がするのである。これも、彼の持ち前な気まぐれの一つかも知れないけれど、今まで経てきた女へ対するものでは、もっとも、根強い気まぐれに違いなかった。
「ごめんよ」
彼はまた、とある床屋へはいって行った。床屋の男は、治郎吉の剃ったばかりな青い髯痕をながめて、ふしぎそうな顔をした。
「――なにか、御用ですか」
「てまえは、江戸のもんですが」
「ああそうか」
と、床屋は、草鞋銭を鼻紙につつみかけた。
「待っとくんなさい。あっしゃあ、渡り職人じゃありません。実あ、知り人を尋ねて来たんですが、その人の娘が、床屋廻りの元結売りをしていると聞いたんですが、もしや所を御存じじゃありますめえか」
「ヘエ、何ていうんですか」
「若い女で、お喜乃さんというんですが」
「お喜乃さんなら、天王寺裏のお鉄漿長屋に住んでいる、感心な娘さんだ。