Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

お稲は急に立って、気がかりらしく、障子を開けた。仙吉の合図があるまでは、静かにしているようにと吩咐けてあるので、部屋の方も、この母屋も、いつもの晩よりはひっそりとしている。

するりと、外へ抜けるお稲をながめて、賛之丞はあわてながら呼んだ。

「お稲、お稲、ど、どこへ行くんだ」

「叱ッ……」と、女の眼はそれを制して、

「あまり遅すぎるから、ちょっと、仙吉の様子を見て来ようと思ってさ」

頼むよ――というように、男の眼は、安心してうなずいた。

×   ×   ×

その後へ、しびれをきらした鮎川の乾分の一部が、忍びやかに、賛之丞のいる部屋へ寄った。

「先生、先生……」

「おウ、部屋のものか」

「どうしたって言うんでしょう」

「何が?」

「さっぱり合図がねえじゃありませんか。凍えてしまいそうですぜ、外にいる奴は」

「騒ぐな。もう少しの辛抱だ」

坐り直すと、賛之丞はまるで先刻の賛之丞ではなかった。決して、お稲へゆるしたような哀れっぽい弱気はどこにも見せなかった。

「――一刻ばかりが大事なところだ、おれも今すぐに出向くから、持場を離れずに撓めていてくれ。日ごろの稽古を試すのは今宵だぞ」