Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

水は玉川布ざらし

月は武蔵の市ざらし

「おっ母。――おっ母」

どんどんどんと、百は田無の家の戸をたたいていた。嬰児を寝せつけているらしいおしげの子守唄が、外より暗い家の中に、ほそぼそと、聞えるのである。

「おっ母、おれだよ。開けてくんねえ」

はたと、子守唄の声がやむと、びっくりしたように、

「百かよう」

「おらだい。今、帰って来た」

「オオ、オオ」

あわてて、何かに、つまずいたのであろう。暗い中で、障子の倒れるような音がした。

「あぶねえな、おっ母、眼のわるいくせにして気をつけろよ。――お稲はいねえのか」

「裏があいてるだあ、百、裏口から廻って来う」

「なんだ、開いてるのか」

百は、裏からとび込んで、

「お稲は」

と、するどい眼で、家の中を見まわした。

鳥眼のおしげに、その血ばしった眼はわからなかったが、手さぐりで、探った百の足に、ぎょっとしたように、

「この、あわて者が、なんぼ早くお稲の顔が見てえからといって、土足で家の中へ上がる馬鹿があるかよ」

「脱いでる間もねえ」

と、百は膝を折って、おしげの両の手を掬いとると、拝むように、

「すまねえ! すまねえ!」

と男泣きだった。