Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
「実は、父が浪人したもとの御主人様へ、年に八十金ずつ御返済するお金があるのでございます」
「もとの主人へ返す金なんか、浪人した以上は、どうでもいいじゃありませんか」
「そうは行かないお金なんです。父の落度のために、その旗本の御主人も、御番頭やら同役のお方たちから、千何百両という大金を立て替えていただいて、一時、公儀のお帳面の表を埋めてあるのでございますから」
「じゃ、おまえさんたちは、江戸にいたのかい」
「丹後町の、脇坂佐内様というお旗本の用人を勤めておりました」
「で、その主人が、公儀のお納戸金か何かを遊びに、費いこんだというわけだね」
「いいえ、脇坂様は、御普請方をしておりますところから、永代橋のお架け替えに、職人達へ支払う公金を、たった一晩、お屋敷の土蔵にとめておいたのが間違いだったのです。どうしてそれを知ったものか、その晩、鼠小僧という賊がはいって、盗まれてしまったのでございます」
「ヘエ……」
治郎吉は、寒くなった。
「鼠小僧?」
「すごい泥棒だそうで、父が、寝ずの番をしていたのに、千両あまりの金を盗んで行くのに、音もしなかったと申します」
「……ふうむ」