Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
なるほど世間で、義賊だ、世直しの神様だと、騒ぐほどの器量はあると、後の回向や、餓鬼の身まで、引きうける気になっていたが、のめのめ、俺に生き面を見せるたあ呆れた奴。愛想がつきた。唾でも、吐きかけてやれ」
「あッ、ひでえことを……」
と、雲霧は、むらがる故買い仲間が、ベッ、ベッ、と吐きかける唾に、我慢の眼をふさいで、
「――佐渡幸親分」
「なんだッ、カス!」
「奥で泣いているようでございます。飛んだ、お世話になりましたが」
「いわなくッても、叩っ返してやろうと思っていたところだ。――それっ、持ってゆけ」
奥へ、駆けこんで、荒っぽく、抱き取って来た子を、両手を伸ばしていた彼へ、抛るように渡した咄嗟だった。
「雲霧ッ。――慥に、雲霧ッ」
うしろで、一喝、耳を衝った。
「あッ?」
と、掴まれた襟がみへ、片手をのばして、雲霧は踉めいた。
踏み外したドブ板から、さっと、黒い泥水が刎ね上がって、彼の合羽にも、彼を捻じ伏せようとする高梨外記の顔にも。
どどどっと、物凄い家鳴りがそれと同時に、佐渡屋の表にも二階にも暴風雨のように起った。御用提灯は、もう畳の上を駈け廻っていた。
十手は走る。