Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lisez 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 213 caractères · 325 écrans
郁次郎が、ここに護送される途中から、影の形に添うように、隙をうかがっている彼女ではあったが、救い出す術はおろか、近づくことすらむずかしい。
だが、花世はまだ、恋人の命が、あと一刻(二時間)の明け方に、終るものとは思っていなかった。――せめて、自分が、夜ごと夜ごとに、この外にまで訪れていることだけでも、恋人の胸に、知らしたいと思うのだった。
もし、怪しまれたらとも、思うのであったが、彼女は、どうしても、会えぬ恋人の胸に、自分の訪れを知らしたかった。心と心とだけでも、会わせてやりたかった。
裏は、森がふかい。塀ごしに、獄舎の塀がのぞまれる。――花世は、そこに立って、尺八を吹き出した。
この曲を聞けば、恋人は、必ず自分と知るであろう、あの、鈴慕の曲を。
彼女のたましいは、尺八をとおって、七孔から空へ翔けだした。そして、自由に、思うままに、獄舎の、牢格子のなかにさえ、やすやすとはいって、昏々と、疲れ臥している恋人の肩にすがって、その、寝顔をのぞいて、
(郁さま、郁さま。……郁次郎さま)
と、すすり泣くのであった。
甘えている。
嘆いている。
そして、眼をさました郁次郎の心と、彼女のたましいとは、手をとり合って、夜もすがら、語り尽きないのであった。