Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lisez 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 213 caractères · 325 écrans
「お! これはご来客、失礼を!」
と、ピシャリッと、閉め切るがはやいか、跫音あわただしく、たたたたと奥の方へ隠れこんでしまった。
羅門塔十郎は、呆ッ気にとられた顔つきで、
「東儀殿、どうなすった」
「ウーム、意外だ。いよいよ分らない」
「一体、今そこへ顔を出した若い武士は、あれは何者ですか」
「羅門氏にはまだご承知あるまいが、拙者は、しばらく見なくとも忘れはせぬ。あの若者こそ、先刻お話しいたした、塙江漢先生のご子息じゃ」
「えっ、では今のが、塙郁次郎ですか」
「たしかに郁次郎だ。――だが解せぬのは、その郁次郎は、長崎遊学から帰府の途中にあるはずで、まだ父の江漢先生の許にも帰ったという話も聞かぬ。然るに、いつのまにかこの屋敷の奥に隠れこんでおるというのは、どういうわけであろうか」
「今の一瞬、彼がさッといろを変えた眼ざしといい、あの妙な挙動、自分にも何とも不審に映ったが……」
と、羅門塔十郎は、その活眼から燃えるするどい洞察力のあらんかぎりをこめているように、腕を拱んで、じいっと、奥の方を見つめながら呟いた。
同時に、東儀与力の脳裡には、つい先程、「時雨の笛」の中から出た手紙の署名――あの郁次郎という文字を、焙り出しのように思いうかべた。