Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lisez 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 213 caractères · 325 écrans
「待て待て」
「へい」
「公用じゃ、殊に、密談を要すること、番頭などに洩らすわけにはならん。内儀に飛脚を打って、立ち帰り次第に、奉行所に出頭させい。世間憚らぬ不貞な行状、きびしく叱りおくぞ」
用の足らぬ腹立ちも交ざッて、苦々しげに立ち上がると、奥と帳場の境をかくしている数寄屋暖簾を分けて、小肥りな、四十がらみの男が、あわただしく、それへ出て、細縞の羽織をさばいて彼の前へ、ぺったりと、両手をついた。
「しばらく、お待ち下さいませ」
「誰だ……其方は」
「当家の主、佐渡屋和平でござります」
「な、なんだと!」
東儀は愕然とした余り、思わず足を退いて、
「佐渡平? ……あの、そちが、死んだ佐渡平だと申すのか」
「鷺江お雪の家で殺されていた町人は、あれは、私の弟、忠三郎でござります」
「それをば何で、先頃、部下の者が当家へ調べに参った時には、そちの内儀を初め家族一同が、悲嘆の涙にくれ、なお、其方が死んだものと申し立てたか」
「まったくの思い違いでござりました。その間違いの原因は、実に十五夜の当日、高輪の月見茶屋から友達と外れて、そのまま、大山へ詣り、箱根熱海と遊び廻って立ち帰りますと、死んだ主人が戻ったというわけで、私の方こそ、呆っ気に取られましたような次第で。