Classiques japonais avec furigana
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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Lisez 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 337 181 caractères · 676 écrans
我は見ぬ花
我は見ぬ花
よく使い込んである九尺柄の槍を杖にしてである、背に鎧櫃を負い、袴の股立を高くからげて草鞋穿きの浪人者が昨日もここの長屋門を訪れた。今日も又、それと同じような身支度をし、陽に焦けた顔にまばらな髯を持って逞しい浪人が、やはり槍を杖に、きびしい眼を光らして、大石家の門内へのっそりと入って来た。
『たのむうッ』
玄関へ向って、胸を張って云ったが、家の中からは答えがなく、その声に吃驚したように奥の植込みの蔭で人影が木の葉をうごかした。
客書院に近い窓の下である。狡猾な盗っと猫のように屈みこんでいた男の挙動が凡ではない。遠く眸を見あわせたと思うと、ぱっと植込みを斜めに駈け抜けて、長屋門の外へ逃げ出そうとした。
紺脚絆を脛に当てて、腰に分銅秤を差している。もちろん町人で、しかもこの頃入って来た旅の者らしい。浪人の槍は途端に横になって、樹木の間を走る男の影に添ってツツツと横歩きに追いながら、
『突くぞっ』
相手が躍り出した鼻先へそれを伸ばした。
土気色な顔を持った町人は立ち竦んでしまった。槍を一方の手に立てると、一方の手はもう男の襟がみをつかまえて、
『他国者だな』