Classiques japonais avec furigana
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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Lisez 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 337 181 caractères · 676 écrans
すでに、主君は歿し、国亡び、相手方吉良殿は無事と承わる今日に於ては、臣たる某共には、自決の途はあるはずにござりまするが、ただ内匠頭の弟大学が控えておりまするままに、暫く生を竊んで、やがての御恩命をひたすら待ち奉る微衷の他ござりませぬ。先に、戸田采女正殿の手を通じて、嘆願の儀、何とぞお取なしありまするよう、その一縷の望みだにかのうなれば、吾々共一統、亡主の廟前に於て、人臣の義を果し、公儀を初め奉り、ひろくは天下万民に罪を謝して、泉下に無用の骨を埋めて已むの所存。ひとえに、御憫察を仰ぎ奉りまする』
彼が日頃の念願を打ちこめて云った。
『…………』
二人の使者は、黙然と、眼を見あわせたきりで立った。
間数を踏んで大広間へ来た。
陽炎のような陽影が、黒い格子天井にうごいている。それを仰いでいる荒木十左衛門の足もとへ、内蔵助はふたたび平伏して、
『御覧ぜられませ、小藩ながらこの本丸にも、三世の年月が古り居りまする。徳川家の藩塀として、ここに一城を築きまするにも、一朝一夕のことではなく、藩祖浅野采女正の勲功、以後代々の忠誠に依り、御恩遇を蒙りましたこと、亡君内匠頭に於ても、夢寐のまも忘れ居らず、常に、臣等を勉め励まし、ただ御奉公一途に専心いたしおりましたに、不測の不調法、残念至極にござります。