Classiques japonais avec furigana
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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Lisez 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 337 181 caractères · 676 écrans
磯貝十郎左は、ここの勝手を、最もよく知っていなければならない一人だった。なぜならば、彼は、ある手段で、上野介の寝所の絵図を持ち出して、先に、一党の者をよろこばせた事があるから。――
『どうじゃ、磯貝殿、寝所は?』
大石主税が、彼へ云った。
木村岡右衛門も、後から尾いて来て、
『わかりませんか』
十郎左は、躍起になっている眸で、
『さあ?』
言葉すくなく首を振る。
そして、奥まった一室へ何気なく入って来た。何という特徴もない十二畳部屋であったが、ふと、床間の壁を見ると、そこに掛けてあった大幅の懸物が下に落ちていて、茶席の瓦燈口に似た切抜穴が、洞然と暗い口を開いている――
『あっ?』
『抜穴だ』
穴の口からは風が吹いてくる。岡右衛門は近づきかけたが、ふと、危険を感じたらしいのである。
(何が居るかわからない?)
そう思っている間に、主税が、無造作に穴を潜ってしまった。
この事は後になって、岡右衛門等が、久松家へ預けられてから、なぜあの時、穴へ入り兼ねて、主税殿に先を越されたか――との問いに答えて、
(人には、勇と怯のべつがあるばかりではなく、同じ勇にも、優劣のちがいがあるものと思われます)