Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

――ああいけねえ。男が、男に、見込んでといわれる程、苦手なものはねえ)

悶々として、あれからの一角は、旅が、捗らなかった。悪い原因は、もう一つある。それは懐中に、兵部から貰った多分な金があることだ。

で、つい――

(ままよ)

と、酒。女。――若い骨が、腐るまでと、五十年の道中を、たった、三月か半年に、縮めようと努力している一角だった。

「どれ、そろそろ」

と、腰を上げると、繭買の銀六老人が、

「今夜は、白河で」

「いや、陽いッぱいに、大田原までは、のせるだろう」

「ついでの事に、夜旅をかけてもいい。今市とまで、突っ走りとうございますね」

「行くか、交際え」

異存はなかった。

駕へ、酒をつませて、今市を指して飛ばした。夜を越して、草露に濡れた駕が、へとへとに疲れて、酒と白粉の宿場へ、抛りこまれたのはその翌日――。

三日ほど遊んでいるうちに。

「驚いた老人だ。酒も強いが、何ていう芸人だろう。してみると、俺などは、極道にかけると、まだまだ嘴が青いのかも知れねえ」

と、繭買の銀六老に、一種の尊敬をもってきた。猥談、酒談、博戯、悪事と諸芸、道楽の百般にわたって、この老人の該博さは、驚くべきものだった。