Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じろきちこうし

治郎吉格子 名作短編集(一)

吉川 英治

Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans

Aozora Bunko

と、お仙は、帯のあいだから、それを出して、

「切る? 切らない?」

「べら棒め、兄妹の縁なんざ、望みとあれやいつでも切ってやらあ」

「じゃ、くれてやるから、これっ限りだよ」

ぽんと投げて、それでも、涙でいっぱいになった眼をそむけながら、梯子段を下りて行こうとすると、

「やい。お仙、ちょっと待てよ」

「なあに?」

「てめえ、この金を、どこから持って来たんだ」

そういった仁吉の掌は、落せば爆発する火薬玉でも乗せたように、百両の封金をふたつの手に持って、蚤の顔を調べるような眼で、封の目や、紙の手摺れなどを、じっと見つめていた。

「どこから持って来たッてんだよ、この金を。――ま、ちょっとそこへ坐れ。訊かねえうちは、受けとれねえ」

お仙は、坐り直して、

「貰ったのさ。世の中にゃ、妹の体を食い物にする鬼ばかりはいないからね」

「誰に貰った」

「お客ときまっているじゃないか」

「というと、てめえと、ずらかった相手の男だな」

「そうよ」

「おかしいなあ……」と腕を拱んで、じっとお仙をするどく睨みながら、「もしや、てめえは、その男に何かふくませて、俺の家へ、様子を見させによこした事がありゃあしねえか」