Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
「人に黙って、抜け駆けをしようとするから、そんな目に遭やがるんだ。ざま見やがれ」
と、笑って、兄弟分のために、奉加帳を廻した。
それで、当座の煙草銭が出来たので、三公はすっかり元気が恢復して、太平楽にその晩、寝物語でこう話した。
「一昨日、深川の帳場で、例の伝公と一緒になった。止しあいいのに昼休みに、オイ伝公、一升五合飲むなら二両賭をしてやろうと言い出しゃアがった。すると伝の野郎フンていうような面して、一升五合なら五両賭でなくっちゃ嫌だと吐かしやがる。そこで、一升三合で折れ合って、始まることは始まったが、二両と来ちゃ大金なんで、此方組が頭数が足らなくなった。そこで、おれもツイ誘い込まれたという理さ」
「そしてどうしたい、伝公は」
「いつもより三合も多い醤油を丼に入れて、ツウときれいに吸ってしまって、今日は二両の日当になったから、左様なら――とか何とか、涼しい事を吐かして、半日で帰ってしまった」
「忌々しい野郎だな」
「聞いただけでも忌々しいだろう。だもの、おれの身になってくれ、口惜しくって、寝つかれねえ」
「もう止せよ、これに懲りて」
「意地だ、こんだあ一升五合賭をやって、あいつに血へどを吐かしてやらなくッちゃ虫が納まらねえ」