Classiques japonais avec furigana
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じろきちこうし
治郎吉格子 名作短編集(一)
吉川 英治
Lisez 治郎吉格子 名作短編集(一) (じろきちこうし) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 178 609 caractères · 362 écrans
「どじ奴! 何をしてやがるッ」
陸の砂利山で、突然荒っぽい声がした。
「なんだ此奴は、さっきから人の鼻ッ先にヒョロヒョロしてやがって、後が閊えてしようがねえ」
「どうも済みません、不馴れなものですから」
左次郎は鼻で息をしながら、青白くなっていた。
「ばか! 馴れねえと承知していたら、こんな帳場へ臆面もなく稼ぎに来るな。どこの馬の骨だ、てめえ」
「銅鑼屋の亀さんの家におります」
「銅鑼屋の部屋にも、てめえのような意気地なしがいるのか。明日は、米の飯を食ってくるんだぞ」
朝の二刻ばかりで、すッかり肩の皮が剥け、ヒリヒリと熱をもって来た。かれは、汗をふくようにみせて、始終涙をこすっていた。
充分気をつけていたつもりだが、何しろ、二刻もつづくと、腰の骨が持ち耐えられなくなって、また誰かの足元へ、ドサッと、天秤を落してしまった。
ハッと思うと、途端に、
「ヒョロ蛙め!」
と、左次郎は、砂利場の桝から下へ蹴飛ばされていた。
するとそれを見た一人の男が、左次郎を蹴って行った軽子のうしろへ呶鳴りつけた。
「やい! やい! 大人気もねえ真似をするないッ。前髪じゃねえか。少しゃ庇ってやるもんだよ」