Classiques japonais avec furigana
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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
Lisez 牢獄の花嫁 (ろうごくのはなよめ) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 162 213 caractères · 325 écrans
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彼の打明けた話によると、亀山六万石の城主松平龍山公はもう齢七十に近い老体であって、とうから、京都の洛外、四明ヶ岳の山荘に風月を友として隠居しておられる。
ところが、龍山公には、世継がない。
複雑な家庭の事情もあったり藩の内争もあったりしたが、とにかく現在では、家老の大村郷左衛門の一子大村主水を仮に藩侯の準養子として、幕府に十年の猶予をねがい、ほんとの世継を決定することになっている。
しかし、その期間も、はや八、九年過ぎて、余すところは、一年ばかりしかない。――その期間が終れば龍山公は、いやでも、藩地を幕府に返して大名の籍をぬけるか、でなければ家老の子の大村主水をそのままほんとの養子に迎えて世継に立てるほかはないのである。――が、こういう場合にはどこにでも起るお家騒動の例にもれず、藩論は家老派の大村組と、飽くまで、龍山公の血すじを世継とするを主張する正統派との二つにわかれて、足かけ十年ちかく紛争している。
というのは――この世に龍山公の血すじがまったくないのではないという事実が、ある時、老公の口から、藩論の席で、洩らされたからであった。