Classiques japonais avec furigana
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つたかずらきそのかけはし
蔦葛木曽棧
国枝 史郎
Lisez 蔦葛木曽棧 (つたかずらきそのかけはし) de 国枝 史郎 (くにえだしろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 335 908 caractères · 669 écrans
それで馬鹿騒ぎをするでもない。
「これというのもあの鳰鳥が、あのように上品で美しいからじゃ、鳰鳥に焦がれて来られるのじゃ」長者はいつもそう思って、壊れものでも扱うように鳰鳥を一層大事にした。
「それにしてもどうして鳰鳥は、あれほど立派な白髯の殿を、嫌うような素振りをするのであろう……噂によればこの夜頃、鳰鳥のもとへは縹緻のよい『紫の君』などと綽名を呼ぶ、若衆が通って来るそうだが、それに現を抜かしていて、白髯の殿をいつもになく粗末にするのではあるまいか」
長者にはこれが心配であった。
長者の心配はもっともであった。鳰鳥の心はその若衆に、この日頃とらわれているのであった。
白髯の殿の一行が、二度目に館へ来た時にその一行と前後して、紫匂う大振り袖、したたるような若衆が、彼女のもとへ通ってきた。この夜が二人の初対面であった。
そして翌る日、その若衆は、白髯の殿の一行と前後して館を出て行った。
そうやって出て行くその若衆の、うしろ姿を見送った時、鳰鳥の胸にはこれまでになかった、恋心がほのかに萌えたのであった。
その夜を初めに若衆は、白髯の殿の一行が、館に鳰鳥を訪うごとに、やはり鳰鳥を訪うて来た。