Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 146 725 caractères · 298 écrans
「吹矢筒はそのままにしてあるでしょうな」
と平次。
「大事な証拠ですから、私の側から離しゃしません、この通り」
倅の又次郎が手を出しそうにするのを止めて、自分で膝行り寄って、壁際に立てかけてあった吹矢筒を取って、平次に渡します。
平次は受取って、端っこを包んだ手拭をほぐすと、中から現れたのは、なるほどはっきり紅いものの付いた、吹口。
「ね、銭形の親分、口紅でしょう」
「そうでしょうね」
平次は気の乗らない顔をして、一と通り吹矢筒を調べると、
「矢はやはり見えませんか」
解り切ったことを言います。
「それが見えないから不思議で――」
「たしかに毒が塗ってあったでしょうな」
「それは間違いありません。神楽坂の本田奎斎先生、――外科では江戸一番と言われる方だ。その方が診て言うんだから、これは確かで」
「なるほど、ところでそんな恐ろしい毒を手に入れるのは容易じゃありませんね」
「ところが、親類に生薬屋があるんですがね」
「えッ」
「嫁の里が麹町の桜井屋で」
「…………」
平次は黙って、この頑固な老人の顔を見上げました。麹町六丁目の桜井屋というと、山の手では評判の生薬屋で、お冬の里がそこだとすると、これは全く容易ならぬことになります。