Classici giapponesi con furigana
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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
Leggi 平の将門 (たいらのまさかど) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 232.193 caratteri · 463 schermate
野の王者であり、野人の中の親分であった。
けれど、こういう順調な、そして隆運の日が巡って来ても、彼には、どこか虚無的な影が拭いきれていなかった。――こういう変り方が彼の人間に見え出してきたのは、最愛の桔梗と、彼女との仲に生まれた一子とを、叔父の良兼の兵のために、芦ヶ谷の入江で惨殺された時からの現象である。
あのときの、彼の絶望感と、人間の残虐性への烈しい憤怒とは、今もって、鑿で彫りこんだように、彼の相貌に、深い陰影をとどめている。
顔ばかりでなく、その陰影は、もちろん、心の壁にも、カビみたいに、染みついていた。
酒は、年と共に、量を増した。いまでは大酒の方である。鯨飲すると、心の窓がひらけ、自然、からりと気が晴れるらしい。
「おい、蝦夷萩。……おまえはもう都へ帰さないぞ。それとも江口へ帰りたいか」
将門は、草笛のほそい腕くびを握っていった。ある夕べの酔いの中であった。
「まあ、私を、蝦夷萩だなんて……。私は江口の草笛ですよ。そんな名ではありません」
「拗ねたのか」
「だって、ほかの女と間違えられたりすれば、どんな女だって怒るでしょう」
「怒るなら怒れ。……都にいた頃、初めて、おまえと馴染んで、心をおどらせたのも、おまえがその蝦夷萩と瓜二つといってよい程、よく似ていたからだった。