Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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めいあん

明暗

夏目 漱石

Leggi 明暗 (めいあん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 322.590 caratteri · 645 schermate

Aozora Bunko

が彼の記憶を襲った。

彼は不愉快になった。急に気を換えて自分の周囲を眺めた。周囲のものは彼の存在にすら気がつかずにみんな澄ましていた。彼はまた考えつづけた。

「どうしてあんな苦しい目に会ったんだろう」

荒川堤へ花見に行った帰り途から何らの予告なしに突発した当時の疼痛について、彼は全くの盲目漢であった。その原因はあらゆる想像のほかにあった。不思議というよりもむしろ恐ろしかった。

「この肉体はいつ何時どんな変に会わないとも限らない。それどころか、今現にどんな変がこの肉体のうちに起りつつあるかも知れない。そうして自分は全く知らずにいる。恐ろしい事だ」

ここまで働らいて来た彼の頭はそこでとまる事ができなかった。どっと後から突き落すような勢で、彼を前の方に押しやった。突然彼は心の中で叫んだ。

「精神界も同じ事だ。精神界も全く同じ事だ。いつどう変るか分らない。そうしてその変るところをおれは見たのだ」

彼は思わず唇を固く結んで、あたかも自尊心を傷けられた人のような眼を彼の周囲に向けた。けれども彼の心のうちに何事が起りつつあるかをまるで知らない車中の乗客は、彼の眼遣に対して少しの注意も払わなかった。