Classici giapponesi con furigana
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めいあん
明暗
Leggi 明暗 (めいあん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 322.590 caratteri · 645 schermate
顔を洗ってまた茶の間へ戻った時、彼は何気なく例の黒塗の膳に向った。その膳は彼の着席を待ち受けたというよりも、むしろ待ち草臥れたといった方が適当であった。彼は膳の上に掛けてある布巾を除ろうとしてふと気がついた。
「こりゃいけない」
彼は手術を受ける前日に取るべき注意を、かつて医者から聞かされた事を思い出した。しかし今の彼はそれを明らかに覚えていなかった。彼は突然細君に云った。
「ちょっと訊いてくる」
「今すぐ?」
お延は吃驚して夫の顔を見た。
「なに電話でだよ。訳ゃない」
彼は静かな茶の間の空気を自分で蹴散らす人のように立ち上ると、すぐ玄関から表へ出た。そうして電車通りを半丁ほど右へ行った所にある自動電話へ馳けつけた。そこからまた急ぎ足に取って返した彼は玄関に立ったまま細君を呼んだ。
「ちょっと二階にある紙入を取ってくれ。御前の蟇口でも好い」
「何になさるの」
お延には夫の意味がまるで解らなかった。
「何でもいいから早く出してくれ」
彼はお延から受取った蟇口を懐中へ放り込んだまま、すぐ大通りの方へ引き返した。そうして電車に乗った。
彼がかなり大きな紙包を抱えてまた戻って来たのは、それから約三四十分後で、もう午に間もない頃であった。