Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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めいあん

明暗

夏目 漱石

Leggi 明暗 (めいあん) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 322.590 caratteri · 645 schermate

Aozora Bunko

やっとの事で、下女の足音が廊下の曲り角に聴えた時に、わざと取り繕った余裕を外側へ示したくなるほど、彼の心はそわそわしていた。

「どうしたね」

「お待遠さま。大変遅かったでしょう」

「なにそうでもないよ」

「少しお手伝いをしていたもんですから」

「何の?」

「お部屋を片づけてね、それから奥さんの御髪を結って上げたんですよ。それにしちゃ早いでしょう」

津田は女の髷がそんなに雑作なく結える訳のものでないと思った。

「銀杏返しかい、丸髷かい」

下女は取り合わずにただ笑い出した。

「まあ行って御覧なさい」

「行って御覧なさいって、行っても好いのかい。その返事を先刻からこうして待ってるんじゃないか」

「おやどうもすみません、肝心のお返事を忘れてしまって。――どうぞおいで下さいましって」

やっと安心した津田は、立上りながらわざと冗談半分に駄目を押した。

「本当かい。迷惑じゃないかね。向へ行ってから気の毒な思いをさせられるのは厭だからね」

「旦那様はずいぶん疑り深い方ですね。それじゃ奥さんもさぞ――」

「奥さんとは誰だい、関の奥さんかい、それとも僕の奥さんかい」

「どっちだか解ってるじゃありませんか」