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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「それじゃ! さては……」
「掠りましたよ」
「はあ」
「我が身掠りましたよ」
「…………」
「密書があれば密書を掠る。小柄ほしければ小柄を掠る」
「はあ」
「我が身は掏摸の係りでしてな」
「はあ」
「ほかにもいろいろ係りの人があります」
「はあ」
「一日に五十里走る男」
「はあ」
「どのような堅牢の錠前であろうと、針一本で開ける男」
「はあ」
「細作の名手、放火の上手、笛の名人、寝首掻きの巧者、熊坂長範、磨針太郎、壬生の小猿に上越すほどの、大泥棒もおりまするじゃ」
「はあ」
「で、我らは飛天夜叉じゃ」
「あッ、飛天夜叉! おおそうそう! 飛天夜叉の方々に相違ない。私は同じ飛天夜叉の、桂子様に召しつれられて……」
「叱!」
と男はたしなめるように云った。
「桂子様などと仰せられてはならぬ」
「では、ナ、なんと申しますので?」
「姫君様よ、お解りかな」
「姫様君、はあさようで」
「若君様と仰せられてもよろしい」
「若君様? では男で?」
「男になられる場合もある」
「はあ」
「老婆になられる場合もある」
「老婆に?」
「怨敵『鬼火の姥』などを相手に競争される場合には、老婆姿にもなられるのじゃ」
「はあ」
「老爺になられる場合もある」