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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

そう、姉の桂子は、恋を封じられている筈であった。

それについて浮藻は姉の口から、以前こういうことを聞かされた。――

「浮藻や、妾は可哀そうなんだよ。妾は一生涯男の人とは、恋をすることは出来ないのだよ。恋をとげた刹那妾の力は――普通の人には出来ないことでも、妾だけに出来る超自然の力が、失われて返って来ないのだよ。……そう運命づけられているのだよ。……浮藻や、妾は美しいでしょう? だから妾から恋してもよければ、男の方からも恋されるのだよ。……そういう妾が恋を封じられている……でもその代わり超自然力を、与えられているのだよ。――ところがどうだろう鬼火の姥は、妾とは全然反対なのだよ、姥はあんなに穢いから、自分でも恋する資格がなく、男からも恋されはしないわねえ。……そういう姥はいつの場合でも、恋していなければいけないのさ。いつでも男と接していなければ、あの女の持っている通力が、妾と同じような超自然力が、失われてなくなってしまうのだよ。……それがあの姥の宿命なのさ。……だからあの姥から超自然力を奪おう、こう思ったら一切の男を、姥に接近させなければよく、持っている男を取り上げればよいのさ」