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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
可愛く思われてならなかった。
(燈火をつけたままで行こうかしら、それとも消して行こうかしら?)
と、早瀬は立ったままで考えた。
丸太と板とで出来ていて、天井の低い小屋の床には、猟師の食べのこした獣の肉の、干からびたのが捨ててあったり、頭葢骨や肋骨がとり散らされてあり、そこへ細長い早瀬の影法師が、焔の加減で顫えながら、延びちぢみして映っていた。
(帰って来る時の栞になる。燈火は消さずにつけたままで行こう)
で、早瀬は小屋を出た。
窓から射し出た松明の光で、小屋の外は少し明るかったが、その光の輪から出ると、嬰児を抱いた早瀬の姿は、夜の暗さに消されてしまった。
でも、木立の枝葉をもれて、星と月との空の光が、紫陽花色に降って来たので、その圏内へはいった時だけは、顔に白布をのっぺら坊のように垂らした、女怪のような早瀬の姿が、森の魔のように隠見して見えた。
(この嬰児のお母様の敵を、わたしどうあろうと取ってやらなければ!)
そう早瀬は考えていた。
(竹の杖をついた盲目の、『裏切り者』と宣る殺人鬼に、どうともしてわたしは巡りあいたい。そうして蝮を食いつかせ、早くあの世へ追ってやりたい。