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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
……お城の様子はどんなかしら?」
「赤坂の城内でござりましたら、士気旺盛と申しますより、ほとんど関東の寄せ手の勢など、眼中にないといったように、静まり返っておりまする」
「そうだろうねえ、そうなくてはならないよ」
「いずれもが申しておりまする。われらが御大将多門兵衛様は、智徳兼備わが朝での孔明、このお方をいただいている以上、戦いに負けよう筈はない。その上に我らは金枝玉葉の、大塔宮様をさえ奉戴いたしておる。死も生も問題でないと。……」
「その宮様のご機嫌はいかが?」
「いつも麗かにござりまする」
「随分ご苦労あそばしたのにねえ」
主上と計りたてまつり、大塔宮様が積極的に北条氏討伐のご計画を進め、まず六波羅を攻めようものと、ひそかに北畠具行をして、諸国に兵を徴させたのは、七月下旬からのことであった。
が、不幸にもこのことは、八月に至って北条方に洩れた。
高時は大いに狼狽したが、長崎高資の謀を用い承久の例に則って、人臣の身としては不埓にも、主上を絶島に遷し参らせ、大塔宮様をとらえたてまつり、ともかくもせんものと計画し、この旨を六波羅へ申しやった。
と、いうことを大塔宮様には、告ぐる者あってお知りになり、直ちに内裏へ密奏した。