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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
それはあたかも岩の城門が、音なく開いてそれらの生物を、呑み込んだとしか思われなかった。
この月の二十八日に、笠置の城は落城した。そうしてその城にこもっておられた、主上をはじめたてまつり尊澄法親王、藤原藤房、同じく具行、千種忠顕、尊貴縉顕の方々は、関東軍の手に渡った。
月を越えて十月となり、その十日の午後となった時、
「お姫様いよいよでござります」
と、赤坂の城からぬけ出して来た、風見の袈裟太郎が注進に及んだ。
「何んだよ袈裟太郎、あわただしいではないかえ」
と、館の奥の書院の間で、塗り机に肘をもたせかけ、以前偶然行ったことのある、金剛山の谷間の城門のような岩壁のことを、思い出していた桂子は云った。
「いよいよ関東の兵ども、赤坂城を目ざしまして、押し寄せましてござります」
袈裟太郎は眼を据えて云った。
「その前衛の部隊としまして、勝間田彦太郎入道が、一千の兵を率いまして、伊賀路より、たった今しがた、白布の郷へ入りまして、農家に分宿いたしましたり、仮屋を建てましたり、幕屋をつくりまして、宿しましてござります」
「そうか、いよいよ来たのかい。そろそろ来る頃だと思ってはいたが。