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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
「飛天夜叉が忍び入っているとよ」
「われらの首を掻こうとよ」
「身を変じているそうじゃ」
「白拍子にか遊君にか?」
「あの女ではあるまいかな?」
飛天夜叉桂子の凄い噂を、聞き知っている彼らだったので気味悪く思われてならないのであった。
姥も座中の女たちを、鋭い眼で一人一人検査したが、
「飛天夜叉めとこの姥とは、相識の仲にござります。いずれに変身しておりましょうとも、余人は知らず姥の眼だけは、眩ませることなど、どうしてどうして! ……が、変じゃ、見あたらぬ!」
座中の女たちは姥に見られ、身の縮む思いするらしく、首をちぢめたり肩をすぼめたり、顔をそむけたり、俯向いたりした。
そうして自分たちの間でも、あの人がそうではあるまいか? この人が飛天夜叉ではあるまいかと、疑がい惑い怪しみ合っていた。
一道の鬼気が白々と、冷たく座を貫いたのである。
と、この時中庭の奥、張った幔幕の背後から、云い争うような声が聞こえて来た。
「ともかくもお知らせ致さねば……」
「興をさまそう、後刻に後刻に」
「いやともかくもお耳へだけは……」
幔幕をかかげて一人の武士が、おそるおそる中庭へ入って来た。