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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
先に立って引き返した。
盲目の乞食に御心引かれたが、彦四郎の様子がただならなかったので、宮家は黙々と御足を返された。
藤の棚の側まで来た時であった、一人の女が立っていたが、宮家のお姿を眼に入れると、地にひざまずいて額をつけた。
「蓬生ではないか」
と宮家は仰せられ、泣いている女をいぶかしそうに見られた。
「蓬生殿」
と彦四郎は云った。
「ただ今の事情を宮家のお耳へ」
すると蓬生は嗚咽しながら言葉せわしく言上した。
「良人ながらも大弥太こと、天魔に心魅入られましたと見え、熊野の定遍の味方につき、家を明けましてござりまするが、父、兵衛のこの頃の不在を、早くも探り知りましてか、定遍の手の者荒くれ武士どもを、今夜大勢ひきつれ参り、家にて評定仕り、勿体なくも宮様を。……立ち聞きしましたわたしの驚き! こは一大事と存じまして、裏口よりかちはだしで、走り出でまして駈けつけ参り……」
「さようか」
と宮家は仰せられた。
「そちの誠心うれしく思うぞ」
「は、はい、ただもうその御言葉、わたくしこそ妾こそ……勿体ないやら嬉しいやら……それにいたしても良人大弥太……」
蓬生は土へ食いついて泣いた。