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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
どうでもこの地が御身に危険で、お去りにならなければならないのなら、妾もご一緒にお供して行き、いつもお側にお仕えして、その御体をお守りしたい!
「宮様!」
と呉服は御衣の袖を、自分の涙でぬらしながら、
「呉服もお供仕ります。……お連れなされてくださりませ。……どのような艱難に逢いましょうとも、きっとわたくしは堪えまする! ……お連れなされてくださりませ!」
御袖を放そうとはしないのであった。
しかしその時、四条隆貞が、訓すようにしみじみと云った。
「呉服殿のお心持ち、もっとも千万至極ではござるが、兵部卿大塔宮護良親王様が、関東討伐のご事業のために、吉野入りあそばさるるというご大切の御旅に、女人をお連れあそばされたとあっては、世間へ聞こえいかがであろうか? この辺おもんぱかりなさらではのう」
それにつづいて村上彦四郎が、
「お別れとはいい条大塔宮様は、程遠からぬ吉野の御山へわずかに、御住居を御移しになるばかり、しかもやがては高野も熊野も、御手にお入れあそばさるるご方寸、しかれば十津川は交通の要路、再々お通りあそばさるれば、そのつどお眼にかかれまする。……で、むしろ呉服殿におかれては、竹原入道殿のお側におられ、兄や大弥太の濁りに染まず、入道殿や兵衛殿と共々、陰に陽に宮様ご事業を、お助けなさるこそまことの誠忠、また貞節