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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页

青空文庫

アッハッハッハッ、イッヒッヒッ」

「何がおかしい、この馬鹿者!」

「じゃと申しても、アッハッハッ、その連判状と申すやつが、誰かの懐中にありまして、この辺にまごまごしているとあっては、何がおかしいと仰せられても、やはりメチャメチャにおかしくて、アッハッハッ、エッヘッヘッ、クックックッ、ピッピッピッ――」

と、桂子の館で笑い上戸の稽古に、憂身をやつしている一人の男の、その笑い方を知っているだけに、小次郎の笑い方は堂に入っていて、なかなか立派なものであった。

だが小次郎は笑っていながらも、ああまで連判状の行衛について、兄上が心配しているのだから、いいえさ兄上ご心配なさるな、兄上があの時お斬りになった奴が、その連判状を持っておりまして、それを私が横から出て奪い、今懐中に持っておりますと、こう云って安心させてやろうか。――こう思わざるを得なかった。

(が、まアもう少しジラシてやろう)

与太でナンセンスでいたずらっ児の彼は、ここでも本性を発揮して、明かさないことにきめてしまった。

「小次郎」

と頼春は沈痛に云った。

「女房というものいとしいものだぞ!」

「はあ」

と馬鹿らしくなったので、小次郎は冷淡な返辞をした。