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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
と、大庭の中ほどから、謡う声囃す声が、むしろ朗かに聞こえて来た。
(さては?)
と心に感じられた。
(最後のご酒宴と覚ゆるぞ! ……一大事! ……御命に代わって!)
幔幕をくぐって駈け込んだ。
「おお彦四郎! 生前に逢えたか!」
「宮!」
と鎧に立つところの矢、十六筋を立てたまま、全身蘇芳の色に染まった彦四郎義光は、がばと坐り、
「最後のご酒宴と見まいらせましたが、こは余りにもご性急、かつは軽々しゅう存ぜられまする。並々のご身分にあらせられるることか、宮方一統の運命を、双肩に担わせらるる重責の御身、尚、この儀は申すまでもなく、金枝玉葉の尊貴のご身分、他将軍とは異りまする! ……敵の勢いまだ四方へ廻らず、高野口は自由にござりますれば、なにとぞそこよりお落ちあそばしませ! ただし御跡に残りとどまって戦う兵なくば、敵審かしみ、御後追いかけ申すべし。恐れあることには候えども、召させたもう御鎧直垂と、御物の具とをたまわって、御諱の字冒させくださるべし、御命に代わり申すべし!」
死なばもろともと仰せになり、ご承引あそばされぬ大塔宮様を血涙をもって、苦諌しまいらせ、手ずから宮家の物の具を解き、自身にそれを引き纒い、無二の宮方であるところの、吉水院真遍に道案内をさせ、高野山を目ざして宮家を落とし、一息ついた彦四郎義光は、二の木戸