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あさひのよろい
あさひの鎧
国枝 史郎
「時事新報」1934(昭和9)年8月25日~1935(昭和10)年3月16日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 页
そちが頼春!
が、時綱は兵法巧者の、心掛けある武士だったので、このように大勢して押して行ったならば、四辺動揺して人も出で、それに紛れて十郎頼兼遁がれて、故郷へ帰ろうもしれぬ。――こう思ったので三条河原へ、わざと兵を屯させ、
「頼春殿それがしと参られい」
こう云ってこの軍に附けられて来た、返り忠の土岐蔵人頼春を連れ、他に二人の郎党を従え、頼兼の館へ忍びやかに向かった。
門前に馬をとどめ、小門よりつと中へはいった。
中門の方を窺い見た。
宿直の武士とおぼしい者が、物具、刀、太刀など散らし、枕を外して眠っている姿が、有明の灯で幽かに見えた。
「よし」
と呟いて館を巡り、厩の方へ潜行した。
それから館の背後へ廻った。
(抜け道などあっては一大事)
こう思ったからであった。
が、背後はことごとく築地で、門より外には道はなかった。
「よし」
と時綱はまた呟いたが、
「頼春殿、駈け入りましょうぞ」
と、この時まで無言で従って来ていた、頼春の方へ振り返って云い……
そちが頼春!
……その返辞を待とうともせず、廊から客殿へ駈け上がり、二間ばかり馳せ通り、ここぞと思われる一間をあけた。
「誰だ!」