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よっつのみやこ
四つの都
織田 作之助
「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页
その遊びの動作もなにか急に鈍くゆるやかになって見える。繃帯が捲かれている。
新吉「先生、お父っちゃんに僕が怪我したこと言わんようにして下さい」
清子「どうして……?」
新吉「僕、あした名古屋の工場へ働きに行くんです、怪我したと判ったら、お父っちゃん余計心配しますさかい」
新吉ペコンと頭を下げて、
新吉「おおけに、さいなら」
と、言ったかと思うと、石段を登って行く。ビッコを引きながら。新吉が胴乗り遊びの処まで来た時、馬の胴になって、背中にばかに肥った子供を乗せてフウフウ言っていた一人の子供が、半分四つ這いの姿勢のまゝ、ひょいと横眼を使ったとたんに石段を登って来る初枝、清子両先生の姿を斜めの視線の中にとらえる。
子供「あ、先生や」
そう叫んで、起ち上って挨拶しようとした拍子に、馬全体がくずれてしまって、上に乗っている者が倒れ、胴の者はその下敷になる。
混乱。
新吉はこの混乱をよそに、坂上の露地の家々へ、新聞を投げ込みながら、露地を抜けると、通りへ折れて、黄昏の中へ姿を消す。その後ろ姿の痛々しいが、しかし、どこか活々した感じ!
犬の声がする。新吉が吠えられたのであろう。露地の向うの通りを、夜店出しが荷車をひいて通る。