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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页

青空文庫

二三 町の一角。

葉子「ちっとも鳴けへんわ、新坊行ってしもてから、鳴かんようになった」

鶴三「おかしいな。……あ、夕刊がはいった」

鶴三は新聞を拾って、表へ出て、新聞配達の少年の後ろ姿を見送る。標札屋の老人が店から鶴三に声を掛ける。

標札屋「新ぼん、今頃どないしとるかな」

鶴三「一生懸命働いとるに決っとる、新坊も今は少年工だ」

標札屋「お父つぁんのお前は棒鱈だが、息子はお国の役に立っとるわけや」

鶴三「おれが棒鱈なら、お前は鯡だ、どら風呂へでも行って来るかな」

鶴三、新聞を畳んで懐へ入れて、歩きかけ、

鶴三「おや、やんだようだ」

傘を畳む。

二三 町の一角。

新聞配達の少年、町角を曲る。犬が吠えている。

庄平が、雨がやんでいるのに傘をさして歩いて来て、少年を掴まえて道を訊く。

庄平「君、三十二番地はどの辺?」

少年「さあ、知りまへん、僕はまだ新米やさかい」

少年行ってしまう。

町角から、初枝が勤労奉仕の女生徒を引率して(先頭になって)現れる。

庄平、相変らず傘をさしたまゝ、

庄平「一寸おたずねしますが」

初枝「はあ」

立ち停る。

生徒は初枝に構わず行進する。

庄平「三十二番地はどの辺でしょうか」

初枝「三十二番地? さあ、たしかこの通りだと思いますが……(生徒に向って)停れ!」