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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页

青空文庫

一一 中瀬古家(庄平の家)の一室(――大阪)

一二 浴室の中。

庄平「おかしい、どうもおかしい」

節子「? …………」

庄平(いきなり叫ぶ)「あ、間違ってた、僕の方が入れ換ってる」

節子、くっ/\と笑う。

庄平、角と飛車の位置を置きかえる。

一一 中瀬古家(庄平の家)の一室(――大阪)

将棋盤を真中に、庄平と父の庄造が向い合っている。庄平は和服である。

庄平「どうもこりゃ僕の負けですな」

庄造「そんな事はあるまい」

にや/\して、煙草を吹かしている。

庄平、暫らく盤にかじりついて盤面を凝視しているが、やがて顔を上げて、

庄平「しのぎがありません、これ迄です」

駒を投ずる。

庄造「まあ、そんな処かな、弱くなったな、どうしたんだ、戦地でもやったんだろう」

庄平「親孝行です」

庄造「帰還第一日に親父に将棋を負ける、これ即ち親孝行という事にはならんよ」

両人、笑う。

一二 浴室の中。

庄平と庄造が湯槽に浸っている。

庄平「背中流しましょうか」

庄造「いや、それには及ばん、将棋には勝たせて貰い、背中まで流して貰っては、些か恐縮だ」

庄平(だしぬけに)「うちの財産どれ位あります?」

庄造「お前は戦争に行ってから、単刀直入にものが言えるようになったな、以前は下を向いてぼそぼそ言うばかりだったが」