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よっつのみやこ
四つの都
織田 作之助
「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页
五二 露地。
五三 国民学校の教員室。
鶴三(呟くように)「そんなにお父っちゃんや姉ちゃんの傍が恋しいのか?」
新吉(すゝり泣いて)「うん」
鶴三、暫らく考え込む。
壁に小鳥の籠と並んで模型飛行機がぶら下っている。
鶴三、ちらと見る。
鶴三「そんなにお父っちゃんや姉ちゃんの傍にいたいんなら、お父っちゃんや姉ちゃんがお前の傍に行こう」
新吉、顔を上げる。
鶴三「お前の工場へ一緒に行こう、一緒に働こう! それが一番いゝ方法だ」
新吉「ほんまか、お父っちゃん」(喜ぶ)
鶴三「葉子、お前も行くんだ、一緒に名古屋へ行って一家総掛りで働こう……善は急げだ、明日発とう」
葉子「明日? 明日は中瀬古さんが来やはるんやけど……」
鶴三「中瀬古さんのことは諦めな」
葉子、はっとする。
鶴三(立って雨戸を閉めに行き)「人間は身体を責めて働かなきゃ嘘だ!」
葉子も立って手伝いに行く。
夜店出しが荷車をひいて帰って来るのが窓から見える。
五二 露地。
夜店出しが荷車をひいてはいって行く。
共同水道端の水道の水滴がポトリ/\落ちて、残置灯の鈍い光に照らされているのが、にわかに夜の更けた感じだ。
五三 国民学校の教員室。
初枝が、答案の採点をしながら、窓から昨日の運動会の名残りを見て物想いに耽っている。