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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页

青空文庫

五〇 矢野名曲堂。

五一 名曲堂の奥座敷。

十吉、紙を出してノートしかける。

庄平「君、新聞に書いちゃだめだよ、書かないね、そうか、よし、つまり具体的にいって道場とか錬成場とか療養所とか、いや希望的にいえば、この三つを加味したあるものをだね、建設すべく、今計画してるんだが、もう大体目鼻がついてるんだ……」

母親のお寿がお茶をもってはいって来たので、中断される。

お寿(十吉に)「いらっしゃい」

十吉「はあ、お邪魔しています」

お寿(庄平に)「おや、いつまで脚絆をしてるんです」

庄平(足を見て)「あ、しまった、運動会で先生に借りて、返すのを忘れていた」

五〇 矢野名曲堂。

客はいない。

葉子「中瀬古さんは見合いしやはんのね」

鶴三「男も年頃になれば見合いもするさ……」

葉子「うちかテ、見合いしようかしら?」

鶴三「莫迦! 相手もないのに見合いが出来るか?」

葉子、唇をかむ。

眼がうるむ。

突然、小鳥が鳴く。

うるんだ視線に硝子扉がうつる。

その向うに、雨に濡れた顔、新吉だ。

葉子「まあ、新ちゃん!」

雨の軒下に佇む新吉のおろ/\した姿。

葉子が扉の向うまで来る。

五一 名曲堂の奥座敷。

鶴三の前に新吉が項垂れている。

その横に、葉子が固唾をのんでいる。