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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页

青空文庫

五七 矢野名曲堂の表。

五八 汽車の中。

清子(思わず)「あ、蜂谷さん!」

呼びとめる。十吉ふりむく。

清子「向うで会いましょうね」

十吉、眼を光らせる。感激しているのだ。

清子、坂を登って行く。坂の上には胴乗り遊び。

そして、その露地の向うの通りを、荷物をもった鶴三、葉子、新吉の三人が通るのが、ほのかに見える。

五七 矢野名曲堂の表。

戸締りがしてある。

「時局に鑑み廃業、一家を挙げて産業戦士に転向仕候」

と書いた貼紙がしてある。

その前に庄平が佇んでいる。

音楽が聞えている。然し、それは近くのラジオ屋から聞えているラジオの音楽である。

五八 汽車の中。

鶴三、葉子、新吉の三人。

汽車、停る。

三人の座席にいた男が降りて行く。

ずっと向うに立っていた男が、飛んで来て、

「こゝ空いてまっか」

と、きく。

鶴三「どうぞ」

言って、顔を見る。

鶴三「よう」

夜店出しである。

夜店出し「なんや、あんたか」

葉子「おっちゃんも乗ったはったの」

夜店出し「大阪からずっと立ち通しやったんや。こゝにいるとは気がつかんかったな」

鶴三「で、どこへ……?」

夜店出し「名古屋までや」

鶴三「誰か名古屋の親戚でも死んだのかね」

夜店出し「阿呆らしい、働きに行くんや、名古屋の工場へ」