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よっつのみやこ
四つの都
織田 作之助
「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页
二八 名曲堂の奥座敷。
てな、誰ぞはよ買うて持って行ってくれはったらとこない思てましたんや」
二八 名曲堂の奥座敷。
庄平が鶴三を診察している。
鶴三「どうです? 私の身体は? まだまだ働けますか?」
庄平「大丈夫です、いゝ身体ですよ」
鶴三(微笑する)「なにしろ、十二の歳から四十五まで、船乗りをしてきたえて来た身体ですからね」
庄平「それがまたどうして……?」
鶴三「なァに気楽な商売をと考えたんですよ、陸へ上った時にね、コックの腕に覚えがあるんではやらぬ洋食屋をやったり、こんな柄にもないレコード屋をやったり……今にして想えば、もっと身体を責めて働かなきゃならなかったんですよ。こんな隠居みたいな商売してちゃ、あなた身体の肉と骨がバラ/\に離れてしまいますよ、隣の鯡親爺も私を棒鱈だといってますが、全くこれじゃ棒鱈です。で、私も今はいろ/\考えてるんです」
庄平「すこし胃拡張のようですな」
鶴三「へえ? もう手遅れですか」
鶴三、がっかりする。
庄平「なに、大したことはありません」
鶴三「働く分にゃ……」
庄平「差し支えありません、こんど来る時、何か適当な薬をつくって来てあげましょう」
鶴三「どうも、初めて来て戴いたあなたに、身体をみて貰ったり、薬を戴いたり恐縮ですな」