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よっつのみやこ

四つの都

織田 作之助

「映画評論 第一巻四号」1944(昭和19)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,005 字 · 62 页

青空文庫

一七 二条駅附近の通。

その拍子にバスは停る。しかし、そこは停るべくして停る停留所である。車内笑う。

庄平、急いでバスを降りると、神妙に停っている船山の方へ、走って行く。

船山、挙手の礼をする。庄平、応ず。

船山「軍医殿、久し振りであります」

庄平「うん、その後身体の方はどうだ?」

船山「至極健康であります、その節は野戦病院で軍医殿にいろ/\御厄介になり、申し訳ありません」

庄平「健康で何よりだ、しかし、何といっても病後だからな、走ったり、無理な事をしてはいかん」

船山「走らないと、軍医殿のバスを見失いそうでありましたから」

一七 二条駅附近の通。

庄平「で、いよ/\今日神戸の工場へ行くという訳だな」

船山「はッ、もう西陣で織物をやってる時代やないと思いまして……」

庄平「駅まで送って行こう」

船山「はッ、見送っていたゞけますか」

庄平「うん、そのうち神戸へ行ってやるよ。お前の身体を一度診察してやろう」

船山「はッ、有難うございます、もう身体の方は大丈夫や思いますけど、神戸の工場へ軍医殿がおいでやすのは嬉しいであります」

踏切の遮断機が降りたので、二人は立ち止って待つ。

上りの汽車が行ってしまう。

と、踏切の向う側に、辻節子の姿が突然現れている。