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ちきゅうはっきょうじけん

地球発狂事件

海野 十三

「協力新聞」1945(昭和20)年9月1日~1946(昭和21)年(終号未詳)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 86,306 字 · 173 页

青空文庫

「しずかに……。御同席ねがえましょうかな」

「君は誰?――ああ、そうか……」

「しずかに。重大なんだ。極めて重大なんだから……」

その毛皮の男はドレゴを席に戻すと、自分もその横にしずかに腰を下ろした。ボーイが来たので、ドレゴは同じ酒を注文した、咽喉にひっかかったような声で……。

ボーイが向こうへ行ってしまうと、ドレゴはじっとしていることに、汗をかいて努力をした。しかし彼の靴は床をハイ・ピッチで叩きつづけている。

「……心配したぞ」

もうこれ以上怺えきれないという風に、ドレゴが相手に囁いた。

「うん」相手は肯いた。

「僕が今自由の身になってこの町にいるということが知られては、非常に拙いんだ」

「そうか」

「しかし君の力を借りないでは、僕は思うように行動がとれないんだ」

「力は貸そう。で、身体はどうなんだ。一行全部遭難して全滅だと伝えられているが……」

「それは心配するな。少くとも僕自身は大した負傷でもない」

「それを聞いて安心した。このナイフは君へ返しとこう。いつ僕のポケットへ突込んだのか」

「あの汽船の舷梯の下で……」

「あっ、あのときか」

ドレゴは大きく目をあいて、友の顔をまじまじと見返した。