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わらわのはんせいがい

妾の半生涯

福田 英子

「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页

青空文庫

をなし給うぞ。妾の如く貧家に生れ今日重ねてこの不運に遇いて、あわや活路を失わんずるものとは、同日の談にあらざるべしと詰りしに、実に彼は貧よりもなおなおつらき境遇に彷徨えるにてありき。彼は忽ち眼中に涙を浮べて、財産家に生るるが幸福なりとか、御身の言葉違えり、仮令ばその日暮しのいと便なきものなりとも、一家団欒の楽しみあらば、人の世に取りて如何ばかりか幸福ならん。素と自分の洋行せしは、親より強いて従妹なる者と結婚せしめられ、初めより一毫の愛とてもなきものを、さりとは押し付けの至りなるが腹立たしく、自暴より思い付ける遊学なりき。されば両親も自ら覚る所ありてか遊学中も学資を送り来りて、七年の修業を積むことを得、先に帰朝の後は自分の理想を家庭に施す事を得んと楽しみたりしに、志はまた事と違いて、昔に優る両親の処置の情けなさ、かかる家庭にあるも心苦しくて他出することの数なりしにつれて、覚えずも魔の道に踏み迷い、借財山の如くになりて遂に父上の怒りに触れ、かかる放蕩者の行末ぞ覚束なき、勘当せんと敦圉き給えるよし聞きたれば、心ならずも再びかの国に渡航して身を終らんと覚悟せるなりと物語る。