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わらわのはんせいがい
妾の半生涯
福田 英子
「妾の半生涯」東京堂、1904(明治37)年10月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 64,051 字 · 122 页
六 重井と絶つ
否彼がためにその細君より疑い受けて、そのまま今日に及べるこそ思えば口惜しく腹立たしき限りなれ。かくわが朝鮮事件に関せし有志者は、出獄後郷里の有志者より数年の辛苦を徳とせられ、大抵代議士に撰抜せられて、一時に得意の世となりたるなり。復た当年の苦艱を顧みる者なく、そが細君すらも悉く虚名虚位に恋々して、昔年唱えたりし主義も本領も失い果し、一念その身の栄耀に汲々として借金賄賂これ本職たるの有様となりたれば、かの時代の志士ほど、世に堕落したる者はなしなど世の人にも謡わるるなり。さる薄志弱行の人なればこそ、妾が重井のために無上の恥辱を蒙りたるをば、なかなかに乗ずべき機なりとなし、厭になったら、また善いのを求むべし、これが当世なりとは、さても横に裂けたる口かな。何たる教訓ぞや。
六 重井と絶つ
見よ彼らが家庭の紊乱せる有様を、数年間苦節を守りし最愛の妻をして、良人の出獄、やれ嬉しやと思う間もなく、かえって入獄中の心配よりも一層の苦悶を覚えしめ、淫酒に耽り公徳を害して、わがままの振舞いやが上に増長すると共に、細君もまた失望の余り、自暴自棄の心となりて、良人と同じく色に溺れ、果はその子にまで無限の苦痛を嘗めしむるもの比々として皆しかりとかや、アアかかるものを頼めるこそ過ちなりけれ。